
ASTとALTってどんな検査項目だったっけ?高いとどんなことが考えられるんだろう?
こんな疑問を解決します。
こんにちは臨床検査技師のユキフルです。
今回はASTの検査項目について解説します。
この記事でわかること
- 検査の目的
- 基準値
- 高値・低値で考えらえること
- 注意点
目次
AST・ALTとは?
AST:「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ」の略で、昔はGOTと記載されていましたが、ASTが国際基準であるためASTの表記に変更されています。ASTは細胞が損傷を受けたり壊死したりした場合に血液中に放出される逸脱酵素です。ASTは主に肝臓、心筋、骨格筋などに分布しています。そのため、肝臓や心臓、筋肉などの組織の損傷や疾患の指標になります。
ALT:「アラニンアミノトランスフェラーゼ」の略で、昔はGOTと記載されていたがALTが国際基準のためALTの表記に変更されています。ALTはAST同様に細胞が損傷を受けたり壊死したりした場合に血液中に放出される逸脱酵素です。ALTは肝臓に多く分布しているため肝臓疾患の指標になります。

AST・ALTのポイント
- ASTとALTは逸脱酵素。逸脱酵素とは、細胞が障害を受けた時に細胞から血液に漏れ出る酵素。
⇒細胞の変性・破壊があるほどAST、ALTの血中濃度が上がる。 - ASTは肝細胞の他、心筋、骨格筋、腎などにも含まれている。ゆえに特異性が低く原因は絞れない。
ALTは肝臓に多く含まれているので、肝臓特異性が高い。ゆえにALTの増加があれば肝臓に原因があることがわかる。 - ASTの半減期は約11~15時間。対するALTの半減期は約40~50時間。
ALTは血中から消失しにくい酵素であるため急性肝炎の回復期ではALTが優位になる。 - ASTは心筋や骨格筋の疾患で高値を示すが、CKを測定することで鑑別できる。(CK:心筋や骨格筋などの障害で高値を示す)
- 肝障害で肝細胞の障害が主体の場合はASTやALTが優位を示し、胆汁うっ滞主体の場合はALPやγ-GTPなどの胆道系の酵素が優位を示す。
- 甲状腺機能亢進症、低下症で軽度の異常が見られることもある
AST・ALTの基準値
項目 | 基準値 |
---|---|
AST | 10~40(U/l) |
ALT | 5~40(U/l) |
高値・低値で考えらえること
AST高値
アルコール性肝疾患、肝硬変、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、閉塞性黄疸、胆汁うっ滞、筋疾患、心筋梗塞、溶血性疾患、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症など
AST低値
慢性透析、ピリドキサールリン酸欠乏など
ALT高値
アルコール性肝炎、ウイルス性肝炎、肝硬変、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、胆汁うっ滞など
ALT低値
慢性透析、ピリドキサールリン酸欠乏など
ALTに比べてASTが高値
アルコール性肝障害、肝硬変、筋疾患、溶血など
ALTに比べてASTが高値
慢性肝炎、脂肪肝など
AST、ALTが500~3000IU/ℓ以上
重症肝炎、劇症肝炎など
【AST/ALT】

半減期(AST:11~15時間、ALT:40~50時間)
体内分布(AST:9200、ALT:2500)
体内分布(AST:9200、ALT:2500)
- 急性肝炎では体内分布が多いAST優位
- 肝硬変、肝がんでは正常細胞減少によりAST優位
- 慢性肝炎、脂肪肝では半減期が長いALT優位
アルコール性肝障害は一見ALT優位に思えますがAST優位になることが多いです。(AST/ALT比は2以上)
その理由は、アルコールがALTの合成を阻害するためと言われています。
注意点
- 溶血検体では赤血球中より逸脱し偽高値を示すので溶血の有無をチェックする
- 激しい運動をすると骨格筋より逸脱し高値を示すことがある
- 劇症肝炎に至った場合で、臨床的に改善がないのにAST、ALTが急低下した場合は注意。これは肝細胞が壊されつくしたためにAST、ALTの酵素がでなくなった可能性が考えられる。つまり、予後が悪い状態。
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